はなうた日和

はなうた日和  Amazon
癒し7コミカル3
山本幸久はなうた日和 (集英社文庫)集英社,2008
山本幸久さんの作品感想


いいことばかりじゃないけれども、はなうたを歌いたくなるような気分になれる短編集。各話にリンクした世界観もあり統一感もあります。
別の家庭を持っている実の父親に会いに行き、そこでその家の息子とのなんとも複雑な距離感で話を繰り広げる「閣下のお出まし
ちょっぴり訳知り顔のこの二人のやりとりがすごくいいので引き込まれてしまいました。単純に考えれば父親ひどい話なんだけどね。
ぼやぼやっと、でも現実的にスナックで働く陸子のもとに、亡くなった愛人の奥さんがやってくる「犬が笑う」は、したたかな強さが見れて安心。
部下からとんでもないことを依頼される「ハッピー・バースデイ」どこかで読んだことあるような気がしたけれども、気のせいかしらん。


他にも、雑貨屋さんで働くミトコのもとにお見合い話が舞い込んでくる「普通の名字」仕事も恋もぎこちない状況に陥っていた青年が、見知らぬ人の見知らぬ犬を探しに行く「コーヒーブレイク
カメ小たちを集め撮影会を行うミドリの日常「五歳と十ヶ月」特撮の愛好家でこれまでぱっとしなかった男が、少しだけ頑張ってみる「意外な兄弟
どれも少しだけ前向きになれる話ばかりです。何が変わったわけでもないけど、心の持ちようだけで印象がずいぶん変わるもんです。悲しいときでも、はなうたを歌っていれば問題ない気がしていました。
しかし最後の「うぐいす」この話をはなうた気分で読むには難しかったです。どうして最後にこれが収録されていたんだろう。私には不思議です。
ちなみに私のお気に入りは「閣下のお出まし」と「コーヒーブレイク」、「意外な兄弟」がトップ3かな。