床屋さんへちょっと

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癒し7コミカル3
山本幸久床屋さんへちょっと集英社,2009
山本幸久さんの作品感想




自分のお墓を買いに孫と出かける勲の物語から始まります。seiitiさんの感想を読んで手にとりました。勲の日常が描かれる各短編の要所要所に、床屋さんの描写が出てきます。
もちろん年齢が違うので最初は頭が固いなと思う部分もありましたが、私も読み進めるうちに、勲の芯のところにある力強さに惹かれていきました。
また、ちゃらんぽらんに見える勲の娘が、ぽらんなりに仕事に執着していく様子がすごく心地よい文章で書かれています。心配から厳しいことを言うものの、なんだかんだで娘に甘い勲も好きです。


どんどん遡っていくから、どうまとめるんだろうと思っていたら、こうきましたかー。seiitiさんの感想にも書かれていたけど、すっかり失念していました。
勲は父親の会社を倒産させてしまったことで負い目を感じており、無力だと思っているようですが、社長として周囲に後ろ姿を見せていたんでしょう。最後の短編を読み進めるほどに、段々と味わいが深くなっていきます。
素敵な父親像の描き方のツボが押さえられているんですよね。柔軟な視点を持ってるし、お茶目なところはあるし。真正面ではなく凝った構成で読ませるので一味違いますが、有川浩さんの描くかっこいい大人像に近いかも。
心が軽くなるお仕事小説を好きには、確実におすすめできる物語です。


この小説が好きな人にお勧めする3
1 幸福ロケット  Amazon2 フリーター、家を買う。  Amazon3 沖で待つ  Amazon
1、山本さんの小説『幸福ロケット』ちょっと大人の視点も持つキュートな子供たちのお話。→感想
2、有川浩さんの小説『フリーター、家を買う。フリーターの主人公が家族のために仕事に精を出すようになる話。→感想
3、絲山秋子さんの小説『沖で待つ』仕事の知り合いとの距離は不思議な感覚です。→感想