僕と彼女とギャルゲーな戦い

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燃える4コミカル3癒し3
西村悠僕と彼女とギャルゲーな戦い (メディアワークス文庫)アスキーメディアワークス,2010
西村悠さんの作品感想
つぶやき的感想
いつか作家になると片思いの先輩に豪語するほど夢に燃えていた一が、夢を諦めて就職難の波にもまれているところへ、ギャルゲーのシナリオライターとしての話が舞い込んでくるお話。
一はゲーム業界どころかギャルゲーというもの自体に触れたことがなく悪戦苦闘したり、最初はサブという話だったのにいつの間にかメインライターを張ることになったりと、障害が次々と出てきます。


とはいえ、一の執筆速度が半端ないため何とか乗り越えていきます。質に関しては他の人が指摘する環境にあるので、うまく回るんですね。
ソフトが発売できるかどうかという問題に直面しても、一の一発逆転の発想が飛び出しますし。これには思わず笑ってしまいました。しかし、これ考えてみると規制に対する毒を多大に含んでますよね。
物語が進んでいく中で、職場の仲間たちのそれぞれの想いもちょろっと出てきていい感じ。ただ、副社長は何でここにいるんだろう。社長の妻だからというのが一番しっくりくるのですがー。


まったく知らない業界でのスタートとなり、デスマを初体験するなどしごかれつつも、全体的に軽いノリでゲームを作成していく過程が描かれていき、そして一がゲーム作りを通して成長していく物語。
途中ではそんな風に思っていました。どんなに体力的に辛い仕事でも、満足感のために人は頑張れるんだーってなテーマだと。
勘違いも甚だしかったです。正確には、テーマは予想通りでしたが、予想以上に深く掘り下げられていました。唯一と言っていい読者との共感ポイントを狙い撃ちにされたので、がつんと心に響きましたよ。
一点突破のピンポイントな魅力ですが、ギャルゲーになじみがあって、共同で物を作る達成感を知っている私の琴線に触れました。全体的にはタイトルや表紙イラストの印象通りでしたが、いい意味で裏切られましたよ。


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