誰かがそれを

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癒し8シリアス2
佐伯一麦誰かがそれを講談社,2010
佐伯一麦さんの作品感想




染物や編み物の仕事をしている女性や謎の物音の正体を確かめようとする男性の話など、最初の何話かは出てくる人物に関連があるように思われます。最後には歴史小説も収録されている短編集。
職業と共に生活している人が多いからか、専門的で見慣れない言葉が結構並んでいた印象です。自然美豊かな情景と穏やかな日常が描かれるだけかと思いきや、ひっそり深い影を落とすような話題も登場します。
中でも鬱病や俺俺詐欺、過去の思い出などがくっついて出来上がった「」という話が一番好きです。不慣れな土地の飲み屋で女将さんとやり取りする「焼き鳥とクラリネット」も雰囲気抜群。
先ほども述べたように聞きなれない単語は出てきますが、文章自体は読みやすくとてもいい時間を過ごせました。読み終えたあとも、しばらくは落ち着いた心持になれましたよ。ひっそりとおすすめです。