“菜々子さん”の戯曲 Nの悲劇と縛られた僕

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ミステリ4萌え4鬱2
高木敦史“菜々子さん”の戯曲 Nの悲劇と縛られた僕 (角川スニーカー文庫)角川書店,2010
高木敦史さんの作品感想


本名を呼ばれると暴れてしまう奇病を患っている”菜々子さん”が、ある事件の真相を告げ始めます。deltazuluさんの感想を読んで手にとりました。
事件そのものよりも、謎に満ちた菜々子さんが魅力的です。「そりゃ残酷よ。子供だもの」なんてませた言葉を吐きつつ、お澄まし口調なども使うものの、子供っぽくて負けず嫌いで、くだけた表情も見せてくれます。
それらも全部「僕」にだけ見せてくれるのだから特別感も高まります。小学校高学年という年齢のせいか、思考と行動のバランスが不安定で、だからこそ蠱惑的な雰囲気があるんですよね。
悲劇的な事件も配置されていますし、小学生の女の子が性的ないたずら受けているなど、そういう背徳的なエロスがものすごくマッチする世界観。


球技大会での出来事において、菜々子さんが真相を告白してからがこの物語の真骨頂。それまでもかわいかったですが、こんな一面見せられたら、菜々子さんの一挙一動を見守りたくなるのも仕方のないこと。
「あのころ」で語られるイベントはどれもこれも特別で、とっても素晴らしいものです。大人顔負けのかけひき、加えて子供特有の大胆さも混ぜられた、この戯曲に踊らされたい、狂わされたいと思ってしまいました。
最後に一つ疑問を呈しておきたい。インターミッション3のイラストが、一瞬だけ菜々子さんのたくし上げポーズに見えたのは私だけでしょうか。


この小説が好きな人にお勧めする3
1 SHINO ―シノ― 黒き魂の少女  Amazon2 きみとぼくの壊れた世界  Amazon3 秘密  Amazon
1、上月雨音さんの諸説『SHINO ―シノ― 黒き魂の少女』小学生の女の子と生死について会話する物語。→感想
2、西尾維新さんの小説『きみとぼくの壊れた世界』かわいい妹と殺人事件。→感想
3、東野圭吾さんの小説『秘密』テイストは全然違うのですが、秘密に縛られてる感触が近いような。