すべての愛がゆるされる島

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杉井光すべての愛がゆるされる島 (メディアワークス文庫)アスキー・メディアワークス,2009
杉井光さんの作品感想


どんなカップルでも結婚を祝福される……ただし2人が本当に愛し合っている限り……そんな不思議な島を巡る物語。父と娘だけでなく、しこりを抱えた姉弟の話などもあり、順番に視点は動いていきます。
愛について踏み込む話なのに、禁忌的な関係でそれが描かれるから少し嫌悪感を抱いてしまいますね。そもそも、決してみることの出来ない愛の存在証明が関わってくるので、グロテスクなお話ではありますが。


島の住人たちが年齢をとるのが遅く感じられる、あるいは2人の愛が試される扉についてなど、島の存在自体にも謎があるわけで。
神父さんのミステリアスな語りを始め、島の住人たちは思わせぶりなそぶりが多く、正直不気味で近寄りがたいです。読んでいて楽しくなってくるタイプのお話ではありません。
過去の住人が残したインクリボンから奇妙な文章を読み取り、推理を重ねるなども薄気味悪さを助長させているように感じます。


教会の扉の向こう側の秘密も気になるところですが、老師との対話の中で出てきた「神の名において脅迫し、快不快の物差しを造りかえること。幸せを再定義すること。それが信仰です」という言葉が頭に残りました。


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