グラスハート

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燃える7コミカル3
若木未生グラスハート (コバルト文庫)集英社,1993
若木未生さんの作品感想


バンドを追い出されたキーボード担当・朱音が、名前も決まっていないバンドのドラムとして参加して欲しいとの電話を受けることから、怒涛の勢いで鳴り響く物語。deltazuluさんの感想を読んで手にとりました。
初対面の朱音にキーボードの話を捲し立てるなど、癖のある坂本は演奏も個性的。一瞬で周囲を沸きあがらせる独創的な演奏をしておきながら、基本どおりに引くことができないと愚痴る姿はどこかおかしいです。


でもゴーイングマイウェイを貫くリーダー・藤谷の存在のおかげで、坂本が常識人に見えてきます。朱音の憧れのギタリスト・高岡と共に約束をほっぽりだして曲作りに励むなど、傍若無人過ぎる。
もっとも、それが惹かれる要因なのですが。朱音のように飛び込めば、何がなんだか分からないうちに楽しい場所へいけそう。制御が利かず途中下車できないのが怖いですが、そんなこと心配する暇はないかな。


藤谷は人間としてぶっ壊れているだけかと思いきや、自身のポリシーらしきものを言葉の端々からひっ捕まえることができます。分かりづらいけど。
コトバなんかなしで、全部まるわかりだったらいいのになあ……」辺りからの朱音への誘い文句は凶悪だと思いました。こんなこといわれたら、どこまででもついて行きたいと思うに決まってるのに。
バンドメンバーの会話じゃないけど、話が飛び飛びで駆け抜けていくので理解するのは大変なんだけど、流れにのっていくと心から楽しくなれる物語。問題だらけなのに、夢が見えてくる。このノリはいいなー。


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