ぐらシャチ

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癒し4鬱3コミカル3
中村恵里加ぐらシャチ (電撃文庫 な 7-13)アスキー・メディアワークス,2009
中村恵里加さんの作品感想


おっちょこちょいにもほどがある女子高生・榛奈が、犬の散歩とおかりなの練習を兼ねて向かった浜辺で、奇妙なシャチと出会います。
人語をしゃべるシャチなんて未知なるものに出会いながらも、「なんだったのかしら……あれ」で済ませてしまうところはさすがヒロイン。
胸を張り傲慢そうに見えるよう気張っている榛奈ににやにや。あんぽんたんな子はかわいいですね。表紙イラストからの予想を裏切らないです。


頭の回転の早いシャチにグラと命名したり、妙に小難しい言葉を使うグラとのズレの認識など、のんびりしたムードで奇妙な出会い描かれています。そもそも人でないグラとボケ体質の榛奈のやりとりは可笑しいです。
榛奈を反面教師に生きてきたからなのか、やたらと冷静に突っ込みを入れる弟くんを始め、周囲は一般的な人たちで固められています。この人たちは後半も特に変化しないのが印象的だったなー。


どこか田舎の雰囲気さえ漂う中で、榛奈とグラの楽しくふわふわなお話が続くと思いきや、不気味な足音が近づいてきます。高校の入学式以後は、ジワジワと水が染み込んで来る様に身動きのとりづらい展開が続きます。
ドロドロのズブズブなのに、表面的には分かりづらいのが嫌らしさを感じます。周囲の人間は普通の日常を満喫しているので、変な感じなのです。
ある意味、いつもの中村さんの物語なので、ジャケ買いするとハマルこと間違いなし。トップとダウンのギアチェンジが激しく、変な味わいがお好きな人向け。最悪を想像していた私の予想よりはヒーリングなお話でしたよ。


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