テンペスト 下 花風の巻

テンペスト 下 花風の巻  Amazon
燃える6コミカル2癒し2
池上永一テンペスト 下 花風の巻角川グループパブリッシング,2008
シリーズ感想
池上永一さんの作品感想
琉球を舞台に、性別を偽り寧温として政治の世界で活躍する、真鶴の物語。流刑にされた身だというのに、華がある人は隠していてもその才気や色気が出てしまうんでしょうね。まさかの側室試験など、本当に波乱万丈。
わくわくが止まらなくて疲れちゃいますが、心地よい疲労です。……せっかちだから、切羽詰った場面になると思わず結末だけを見てしまおうという誘惑に駆られたのは内緒。読み応え十分なシリーズ完結の下巻です。


側室試験で知り合う真美那は、お嬢様爆弾や「真鶴、泣いちゃう……」「泣けば?」などのテンポで最高にくすぐられました。また、寧温として生きようとする真鶴に対して、厳しい指摘をするなど侮れない部分もありました。
また元聞得大君の真牛は、こてんぱんにやられたキャラだったにも関わらず、彼女の破滅と再生に結構なページ数が割かれていました。非道な行いの数々は許せないけれど、憎みきれないのは愛着が湧いたからかな。
泣き虫の女官・思戸も陰謀家に成長し、出生街道を走っていました。寧温との思い出を胸に奮闘する姿は、ある種分かりやすくて好感が持てます。


そしてペリー提督がやってきて、男性と女性の二重生活をする破目に陥る辺りは、真鶴が困るのを見るのがとても楽しかったです。性別の入れ替え生活なんて、それだけで十分おいしいシュチュエーションなのです。
コミカルな場面ですが、一つ間違えば真鶴どころか、琉球を破滅させるような綱渡りな状況にゾクゾクしました。キャラの魅力がたっぷりで、混迷を極める政局がさらにキャラクターたちを輝かせます。すっごく面白かったー。