投資の科学

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マイケル・J・モーブッシン『投資の科学 あなたが知らないマーケットの不思議な振る舞い日経BP社,2007
マイケル・J・モーブッシンさんの作品感想


専門分野間の交流の重要性が最初に書かれています。構成は「投資哲学」「投資心理学」「イノベーションと競争」「科学と複雑系」の4つ。
エッセイとして書かれているので、投資関連の本としてはとても読みやすいものだと思います。かつ知的な陶酔感も味わえます。以下、メモを羅列。


・ダイエットと同じで長い目で見て意味のあることを実践し続けること。はっきり見える結果よりも、過程を重視。
・後知恵バイアス。意思決定の過程をメモしておくなどしないと、客観的なフィードバックができない。購入と売却時くらいメモしよう。
・確固たる投資哲学を持つこと。ただ状況に応じて戦略的な変化は必要なので、柔軟に運用できる基本的な信念に当たるものが哲学かも。
・損失回避など行動ファイナンスは大学で講義を受けた覚えがあるから、もっと身を入れておけばよかったよ。


・気分という要因に注意するべき。投資対象に魅力を感じているとき、リスクを低くリターンを高く。逆もまた然り。
・個人が合理的な動きをするわけではなく、集団として合理的。あてずっぽうの予想なども含めた全体平均が正しい答えになっていることがよくある。集団の予想が個人の予想を上回る。
・「お返しの恩義」「一度の決断が思考と行動を止める」「他人の言動にかなり依存」「好きな人には否定的なことを告げたくない」「希少性に魅力」
・存在しないパターンを求めてしまう。チャンスが、流れのごく一部に現れると考えるため。そして投資家は、現状での消費を我慢しているので、保有期間が長くなればプラスの利回りを得る確率が高くなると期待。


・高確率を求めてしまうけれども、期待値の算出を心がける。正解の頻度ではなく、正解の大きさが大切。多くのアウトを取られたのに評価されているベーブ・ルースのように。
・期待値がめぼしくなければ参加しなくてもよいことを理解しておくこと。
・得意分野を大切にして勝負を行うことと状況分析に時間を割くことが基本。自分が有利と思う場面で勝負をしかけなければいけない。代打はここぞという場面で使わないと、控え選手がいなくなってしまいます。


・インデックスより高い運用利回りを稼いでいるファンドの特徴。「バリュー投資」「ポートフォリオの集中」「銘柄の保有期間の回転率が低い」
ポートフォリオを評価する機会が多いと、損失を目にする機会も増加。近視眼的な損失が非効率性をもたらす。最近はファンドも短期思考に走り勝ち。将来の大きな報酬より、近くの小さな利益を求めなければ首。
・バイ・アンド・ホールド戦略が高いパフォーマンスを記録している。ただ、全ての投資家が長期投資戦略を採用したら、これは成り立たない。マーケットの多様性の問題。


・遠い未来の予測は的外れになることが多い。しかしイノベーション(革新)は必ず起こる。短期的には適応度を下げてでも、長期的な適応度を上げなければいけない。
・規模が成長の妨げになることはない。脳の形成プロセスはマーケットで企業が淘汰される様子と似ている。効率的ではないが確かなアプローチとして認識。バブルが起こるのは将来の成長の土台作りになっている。
・成長のS字カーブ。加速されたイノベーションは製品のライフサイクルの短縮化。トレンドにあわせて期待値を変更しなければいけない。過去のパフォーマンスという経験が刷り込まれると固定化。
・移り変わりの激しい世界では、新しい会社にかけるべき。企業の寿命は縮みつつある。大企業の成長は失速する。多くの産業が、淘汰を経て成熟期になり衰退のサイクルにある。


・「平地」生活必需品、電気通信、不動産投資信託。「丘陵地」金融、小売、ヘルスケア。「山岳地」ソフトウェア、ファッション関連。
・高い利益を上げている企業の優位性はいつまで続くか。2、3番手もじきに追いつき始める。落ち目の企業は比較的早い段階で転落。
正規分布の前提は正しいが、世界を支配するのは端っこの部分である。極端な価値の変動が標準予測よりも多い。また、小さなことが結果的に大きな結果に。すべての結果に原因を求めてはいけない。