船に乗れ! 2 独奏

船に乗れ!(2) 独奏  Amazon
恋愛5燃える3鬱2
藤谷治船に乗れ!(2) 独奏』ジャイブ,2009
シリーズ感想
藤谷治さんの作品感想


南にオペラを楽しんでもらおうと試行錯誤する姿が初々しくて、男の子してるなーという甘酸っぱい感触のシリーズ2巻目。傑作です。
魔笛」はへんてこりんな話でしたが、音楽を感受するという点ではよいのかな。意味が分からなくても笑ったり涙するものがきっとあります。
白眉は合宿最終日の南との散歩です。林に囲まれ、月に照らされた白いお化けベンチのシーンは鮮烈です。鮎川にからかわれるのさえも心地よく、くすぐったいです。サトルと初めて呼ばれたりもしました。


芸大も考え出し、チェロ先生から宿題を、北島先生からバイトを、フルートの伊藤からは新しい試みを文化祭で頼まれるなど盛りだくさん。
前回大騒動を巻き起こしたオーケストラは、去年以上の壁で立ちふさがります。成長してるから、収まるところに収まるだろうと思っていましたが甘かったな。匙やら指揮棒を投げちゃう展開。極めつけは留学。
大変な思いをして音がよくなったけれども、不安だけが残る留学でした。留学先での演奏を見ていた先生がほめてくれているのに、明るくならない。


回顧調の後悔が吐露されており不安が募りますが、全てがあっという間に過ぎていきます。ぎっしり詰まっていた予定は霞のように消えます。
子供だと気遣われることがどうしようもなくエグイです。最後の希望は哲学だったんだけれども、最後は自分の手で自分の首をしめてます。
本当に目を背けたい物語です。一巻の明るい青春エンタが遠くに行ってしまいます。それでも、だからこそみんなに読んでもらいたい一冊。