幸福ロケット

山本幸久『幸福ロケット』ポプラ社,2005
山本幸久さんの作品感想

平凡な名前だからと自分の名前を好きになれないでいる、転校したばかりの小学生・山田香な子の話が描かれています。seiitiさんの感想を読んで手にとりました。
そんな香な子が、クラスのお嬢様軍団の筆頭である町野さんから、コーモリとそれとなくデートできるように手伝って欲しいと、面倒なことを頼まれてしまい、物語は展開していきます。

少しばかり大人の視線を持っている香な子の語りには、ついつい引き込まれてしまいます。受験勉強があるから読書を我慢しており、「一週間に五冊読みたいところをぐっとこらえて三冊だ」とか考えていたりも。
さらには見てるテレビが鑑定団と誰でもピカソなのもツボ。クラスの中での、自分のかわいさランキングを作っているのにもやられました。
また、最初はお嬢様な性格で周囲に迷惑をかけるだけの女の子かと思っていましたが、侮れない性格をしている町野さんも色を添えています。作戦が失敗してしまうのにポジティブなとことかニクイくらい魅力的。

長い肩書きを持っていた憧れの父親や漫画を描きつつふらふらしているおじさんなど、周囲の大人との距離も描かれています。キャラはふわふわしてる感じがキュートで、物語の構成はとても丁寧です。
コーモリのつぶやきや町野さんとのじゃんけんなど、鮮やかでカラフルなイベントも盛りだくさんでした。恋なのかどうなのか微妙なラインをくり抜いたこんな話、大好きです。

この小説が好きな人にお勧めする３

１、山本さんの話も収録されているアンソロ『LOVE or LIKE』タイトルの恋愛ではなかったように思いますがー。→感想
２、桜庭一樹さんの小説「荒野　シリーズ」初恋ってどうしようもなく特別です。→シリーズ感想
３、森絵都さんの小説『リズム』中学生の女の子が周囲に翻弄されつつも生活する話。→感想