エバーグリーン

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癒し6恋愛4
豊島ミホエバーグリーン (双葉文庫)双葉社,2009
豊島ミホさんの作品感想


文化祭で寄せ集めバンドを結成するも、自分の突っ走りのせいで瓦解させてしまうシンと、落ち込む彼を応援し後押しする、おっとりとした田舎っぽい雰囲気を持つ熱情家のアヤ。そんな中学生二人の物語です。
互いにミュージシャンと漫画家になってからの10年後の再会を約束します。deltazuluさんの感想を読んで手にとりました。


あぜ道で繰り広げられる、相手のこと詳しく知らないんだけど分かり合えているような会話が眩しいです。ものすごく垣根の低い、勘違いという防衛線越しのやりとりというかなんというか。
私はシン君の歌、すげーって思ったんだもん」アヤのやわらなか声でしゃべられると、耳に残ります。「私はシン君にたいしたことないって見抜かれたら五秒以内に舌噛んで死ぬっ」は荒野を思い出す瑞々しさだな〜。


編集さんのお題から出来上がった作品だそうで、シンとアヤコの視点が交互に描かれ、互いの道が交差していく展開は構えることなく入ってくるので座り心地がよいです。
大人になっていく過程で、自分にとっての唯一のものを拡散して、薄めて、隠してしまうことがあるのかも。でも、恋愛を超越した特別な存在という想いを大切にしつつ、生きようともがく二人の姿が魅力的。
最後に二人が宣言する言葉は、一点の曇りもない光り輝くものではなかったけれど、それは悪いことじゃないと思う。ただシンにはもう少し頑張って欲しかったかも。あぜ道での出会いをきっかけに成長してもらいたいな。


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