1/2の騎士 harujion

初野晴『1/2の騎士 harujion (講談社ノベルス)』講談社,2008
初野晴さんの作品感想

弓道部の部長で人気もあるマドカと、副部長でプライベートも影から支える実力者の加奈子。弱小部だった弓道部をさらに成長させようと、地道に基礎を固めようとする加奈子がマドカに振り回されるのは楽しい雰囲気。
マドカは恋煩いを解消するべく、想い人であるサファイアと出会うのですが……ここが最初の山場でした。当初の予想を裏切るものでしたが、とても面白かったです。architectさんの感想を読んで手にとりました。

出てくる登場人物が私のツボぴったりなんですよね。百合に女装に紙飛行機選手権にエントリーした三人娘にゴリラやキリン。主役級の人たちじゃなくても、元気な学生たちは眺めているだけで心も嬉しくなってきます。
ヤクザの事務所にパチンコでカチコミかけるマドカ最高。手探りしている印象のサファイアとの会話もぐー。ワイヤーか否かで喧嘩とか笑いました。

わが道をゆくマドカとサファイアが、いくつかの陰謀に巻き込まれるのですが、触れるきかっけは些細なこと。でも、真相はどれも残酷です。コミカルなやり取りがなければ気分が滅入ってしまっていたように思います。
一番印象深いのは「インベイジョン」かな。最低最悪な話だけど。犯人の目的もその被害もサファイアの取った行動も、どれも鬱々とした気分にさせてくれます。見えない誰かに向かって謝りたくなりますよ。

暗いところに惹かれてしまう気持ちは『漆黒の王子』コミカルなやりとりは『退出ゲーム』が思い出されました。ライトだったりダークだったり、ページを繰るたびに変化する、不思議な感触が面白い成長物語でした。

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