断章のグリム 11

断章のグリム〈11〉いばら姫〈下  Amazon
ホラー7鬱3
甲田学人断章のグリム〈11〉いばら姫〈下〉 (電撃文庫)アスキーメディアワークス,2009
シリーズ感想
甲田学人さんの作品感想
初っ端に添えられている「眠りの森の美女」の物語がえげつないものに微妙に変化していて、先行きが余計に不安になったシリーズ11巻目。
少女が交わしてしまった約束がどう影響してくるのか、小さな棘ですがひっかりました。得たいの知れない棘だから、なおさら怖いのです。
葬儀屋さんにも棘が絡んできます。蒼井と同じく、葬儀屋さんたちはどこか超越した雰囲気があったので、まさかという思いでいっぱいでした。


怪異と一緒に一軒家に閉じられた雪乃は、使命とそれを果たせない自分との間で葛藤します。この辺り人間らしくもあり心配な部分でもあります。
そうしてる間にも、よいのか悪いのか、事態は進んでいき思わぬ人物が再び舞台に上っています。また、リカさんはどうにもこうにも分からない。どこまで信用していいのか距離感を測りかねます。
圧倒的な悪夢に襲われるのは毎度のことですが、今回は特に意図を感じる不可解さが気味悪かったです。もやもやが残ります。


父親が道具を揃え、しっかりと管理し、しかし理不尽に奪われてしまう金魚の姿がいやらしかったです。あるいは、前向きな内容になったと思った瞬間に暗転することも。ほんと、油断も隙もあったものじゃありません。
……誰が姫よ、殺すわよ」という雪乃のセリフは、これまでとのギャップもあってほっとするものでしたが、直後の風乃微笑みにぞくっとしました。
なんか引っかかるような部分があったかと、邪推して読み返しちゃいましたよ。未来に対しての暗示的な文章なのかな。救いがあって欲しいです。