首無の如き祟るもの

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ミステリ6ホラー4
三津田信三首無の如き祟るもの (ミステリー・リーグ)原書房,2007
三津田信三さんの作品感想




本書は、代々栄えてきた旧家とそこに降りかかる災いをベースに、不可思議な2つの体験、事件を小説にするという形式の物語です。
旧家に仕えていた人物とその地に勤務していた巡査の視点なのですが、巡査の奥さんが作家として書き記していくという本格的に凝った構成。sindenさんの感想を読んで手にとりました。


13夜参りを始めとした因習や古くから村に伝わる首無様の怪異譚などが囁かれつつ、不気味で秘め事的なものを覗いたり、不可思議な人間関係や噂話がちりばめられているので、怪異と現実が入り混じります。
どこまで登場人物の心象を信用していいのか、分からなくなってきます。本来なら、作家の文字さえ信用できないわけですし。


事件なのか事故なのか曖昧な最初の事件はともかく、2つめの事件が起きてからは先が気になり本能的に引き込まれます。
TIPSを連想させる事件を補完する幕間の存在や探偵役のおかげで、複雑怪奇な事件が整理しやすく考える一助となりますが、これさえも物語に組み込まれているわけで。ホラーとミステリの境界も分からなくなります。


犯人も動機も犯行方法も分からず、どう足掻いても解き明かせなさそうな事件。真相が語られる場面がたまらなく痺れました。
全部分かったと思いきや、たった少しの欠けさえも飲み込んでしまう新たな説が語られ、最後の最後までひっぱってくれます。本当に面白い本を手にとることができました。全ての要素を飲み込んでしまう、これは本物です。


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