儚い羊たちの祝宴

儚い羊たちの祝宴  Amazon
ミステリ8シリアス2
米澤穂信儚い羊たちの祝宴』新潮社,2008
米澤穂信さんの作品感想




身分の高い人が集まる読書会「バベルの会」が登場する、ラスト一行にこだわった様々な短編小説が収録された本。
お嬢様の秘密の本棚を覗いてしまう使用人・夕日の視点で描かれる、屋敷での騒動を描いた「身内に不幸がありまして」お屋敷の別館に幽閉されている男の世話をする内に、屋敷の秘密を知ってしまう「北の館の罪人
お客様が訪れない別荘の管理を頼まれていた男が、落下して怪我をした山岳部のメンバーを発見する「山荘秘聞」幼い頃からの付き人・五十鈴を巡る話「玉野五十鈴の誉れ」バベルの会が消滅したという衝撃の出だしで始まる、特級の料理人に焦点を当てた手記「儚い羊たちの晩餐


全体的におどろおどろしいゴシックな雰囲気とオチのギャップが印象的ですが、この中では「玉野五十鈴の誉れ」が一番面白かったです。
厳格な祖母のもとで育てられ、最初は言いなりになるしかなかったお嬢様・純香が、よき友人であり先達でもある五十鈴との生活を通して成長し、狡猾になっていく姿を見守っているのが心地よかったです。
ただ、このまま簡単に話が進んでいくわけもなく……。父のいいつけの話題が出たところで、そうきたかーと驚いていたんですが、これが最後の一行ではありませんでした。
正真正銘最後の一行には、ひっくり返された感じがあったわけじゃないんだけれど、ひどく心に残りました。鮮明にイメージを浮かび上がり、それが焼きついて離れないのです。まいりました。