告白

告白  Amazon
鬱6ミステリ4
湊かなえ告白双葉社,2008
湊かなえさんの作品感想




中学校の先生である悠子が、最後に受け持った生徒たちへと、教員を辞めることを告げるシーンから始まる物語。本屋大賞などを受賞しています。
淡々とした話し言葉で綴られており読みやすいのですが、娘の事故死の真相が迫ってくるにつれて、読みやすいのが逆に怖くなってきました。


悠子先生の視点だけではなく、少年Aだったり少年Bの母親の手記を読むその姉だったり、視点が入れ替わり立ち代り話が展開されていきます。
第2章では悠子が受け持っていたクラスの委員長・美月の視点で、次の先生が来てからの様子が描かれています。「ミズホ」など、隠れた悪意が中学生の視点を通して見えきて、主人公がどう思っていようが痛々しいです。


大体どの話も、自分が主観的に感じたことを自分の言葉を通して語られているので、客観的な要素があまりみられません。自分の嫌悪感などは細かく描写されていても、周囲の雰囲気はよく分からないまま。
周りの空気は、ひしひしと伝わってくるそれを、感じ取るしかありません。もっと分かりやすく、もっと大げさに書かれていてもいいのに、不気味な雰囲気を感じにいかなければイケナイという嫌らしさ。推理小説なので謎を解こうとアンテナを研ぎ澄ますと、悪意が立ちはだかるという意地の悪さです。


第一章の締めくくりとか、一番ぞっとしましたね。周りの生徒たちの反応がほとんど見えてこないので、それが怖いのです。見たくないけど、見えないのも怖いのです。流れ出るままにされた自然な文章ですが、血液のようにドロリとした生臭い悪意が秘められていました。


この小説が好きな人にお勧めする3
1 Q&A  Amazon2 天使のナイフ  Amazon3 そして粛清の扉を  Amazon
1、恩田陸さんの小説『Q&A』とある事件についてQ&A形式で語られるお話。→感想
2、薬丸岳さんの小説『天使のナイフ』少年法をテーマにしたミステリ。→感想
3、黒武洋さんの小説『そして粛清の扉を』先生が生徒を人質に立てこもる話。