亡羊の嘆

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ミステリ4癒し3コミカル3
椹野道流亡羊の嘆 鬼籍通覧 (講談社ノベルス)講談社,2008
シリーズ感想
椹野道流さんの作品感想
ミステリなのにホラー風味な赴きもある、検死官を主人公にしたシリーズ6巻目。主人公を始め法医学教室の面々はコミカルなのがポイントです。
そんなメンバーたちが年の暮れに呼び出しを食らって、テレビでも有名な料理研究家が惨殺死体として運ばれることから物語は動き始めます。


惨殺死体を扱っていると言うことで、死体の描写はまったくもってひどいものです。「一つの死体に百ヶ所以上の損傷がある症例など、そう珍しくはないのだ」とありますが、いまいちピンときません。
私の想像の外なので、今まで以上に死体に目がいってしまいます。素直に怖いなと思いますね。作業と割り切ってみても、相当に大変なことだと思うのですが、強い思いがあればタガがはずれてしまうのかな。


ミチルさんが失礼な発言をされた後の、「後ろに気をつけなさいよ」というセリフから「真正面から刺します」となっていくのは笑いました。
また、うーたんの今後を考えるとやるせなくなりました。母の思いを知り、取り返しがつかないと気づいたときの悲しみは想像を絶します。


このシリーズの一番の魅力は食事のシーン。今回はお雑煮の話から、普通とは何かという話の流れがスムーズでよかったです。ご飯の間に語られていることって、どこまで言っても正論だから聞いていて気持ちがいいです。
もちろん、その正論を現実にどこまで摺り寄せられるかについても考えられているわけで。そう言えば、前巻で明かされた龍村の美談についても言及されています。後悔しているという下りを読むと、余計にかっこいいな。