雪蟷螂

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ファンタジー5燃える3泣ける2 <ピックアップ5>
紅玉いづき雪蟷螂 (電撃文庫)アスキーメディアワークス,2009
シリーズ感想
紅玉いづきさんの作品感想
アルスバントの山脈で暮らす部族・フェルビエ。愛するものさえ噛み殺すとされる激情を持つフェルビエの女を中心に、民族間の対立などが冬の山脈を舞台に描かれていきます。3作目であり最後の人喰い物語。
和平のためにミルデの族長・オウガに嫁ぐアルテシアを始め、彼女の影武者・ルイや従者・トーチカが厳しい現実と立ち向かうことになります。部族や世代、価値観の違いなどを超えたところで物語は展開していきます。何色にも染まっていない白の塊が、全てを覆い、埋め尽くしていくように。


真っ白な雪の風景には、雪蟷螂の恋が浮かび上がってくるわけですが、恋を知るだけでなく、はっきりと悟った人は強いですね。そういう意味で、見開きのイラストはやられました。本当に、ここぞってときにやってくれますな。
雪蟷螂の恋は美しいだけでなく鋭利な鎌もあるのだけれど、それを責めることが私にはできないです。「狂うほどの恋を、なしとげた人間を。幸福という以外、なんと呼べばいいのか」に共感です。
この冬山の物語を読み返してみると、行動の裏にあるものが見えてくるので、さらに思い入れが強くなること間違いなしですね。


これまでの人喰い物語と違い、人間しか出てきません。いや魔女は出てきますが、婚礼へのはなむけの詩を歌うだけで、直接的には関わってきません。それでも、これは人喰いの物語なわけで。
純白が目に焼きつく、シリーズの中で一番綺麗な物語だと思いました。


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