退出ゲーム
初野晴『退出ゲーム』角川グループパブリッシング,2008
初野晴さんの作品感想
弱小吹奏楽部の部員であるチカとハルタが巻き込まれる4つのお話。architectさんの感想を読んで手にとりました。
文化祭の準備中に盗まれた劇薬と脅迫状を巡る「結晶泥棒」六面全てが白色のルービックキューブに挑戦する「クロスキューブ」制限時間以内に役柄になりきってステージを出るゲームに参加する「退出ゲーム」見たい夢をみることができる発明品が巻き起こす「エレファンツ・ブレス」
考えるよりも先に動く印象のチカと、彼女を支えているようで眺めているだけのようなハルタの組み合わせが楽しい。推理場面じゃなくても、普段の会話が読んでて楽しいのです。漫画的な面白さだな〜。謎は深くて固い謎が多いのにー。
5時間かけてコーヒーを飲んだことがあるハルタを始め、変人が多いから面白いです。いやほんと、ハルタ作の傑作戯曲は見てみたい。冷静さを前面に出しているようで、意外にいじられる成島さんもかわいかったですよ。
と言いつつ、一番魅力的なのはチカですね。急展開についてこれないチカの動揺を眺めて悦に入るのもありです。「逮捕する」とか「……100万回生きたねこ」とか答えてるとなんかにやけちゃう。
「お前それでも女子高生か? 場末のスナックのバツイチのママみたいなことをいうな!」と言われちゃったりも。シリアスな場面でも、彼女のおかげで重苦しくなってないですね。
よくわからなくてもとりあえず話に噛み付く、みんなに囲まれてる愛されキャラのチカが素敵でした。この本を読めば、推理小説は堅苦しいとかいうイメージを持ってる人も、敬遠しなくてすみそうなんだけど。ああ、私もこういう話を書きたいです。雰囲気がズバリ私好みでした。
この小説が好きな人にお勧めする3
1、初野さんの小説『漆黒の王子』ミステリとファンタジーが入り混じったようなじっとりした話。→感想
2、米澤穂信さんの小説「小市民 シリーズ」目立たず生きようとするけどうまくいかない二人のお話。→シリーズ感想
3、加納朋子さんの小説『掌の中の小鳥』色を巡る話もある連作短編集。→感想