断章のグリム 8

断章のグリム 8  Amazon
ホラー7ミステリ3
甲田学人断章のグリム〈8〉なでしこ(上) (電撃文庫)アスキー・メディアワークス,2008
シリーズ感想
甲田学人さんの作品感想
グリム童話を主軸に展開されるシリーズ8巻目。今回は「なでしこ」という物語がテーマです。作中やあとがきでも触れられているけれど、マイナーなお話です。私も知りませんでした。
蒼衣の友人である2人組みの会話は楽しいっすね。日常の象徴なんでしょうが、今回はわりとツボにきましたよ。
あと、重苦しい話ではあるのですが、雪乃がかわいくて和みます。いくら口が悪くても、それがかわいらしさの一助にしかならないなんて、どこまでかわいらしい女の子なんでしょうね。蒼衣と雪乃はもう互いに切っても離せない関係になっていますよ。


物語が崖を転がり始めるのは、自殺してしまった少女・琴里と彼女の彼氏であった臣、そして幼なじみの一真が関わってくる辺り。この構図からして痛々しいです。
穏やかな蒼衣も思わず嫌悪してしまう現場を目撃してしまうわけですが、やはり踏み切りの音が不気味です。最近は車の移動が多くてあまり聞いてなかったのですが、あの音って否応なく不安が高まってきますよね。
自転車のライトも嫌な雰囲気に一役かっています。頼りない光だし、漕がないとつかないという不便さが素敵に不気味。こういう道具選びもいやらしい。


終盤の一真と臣の視点が交互に入れ替わるところは、ページを繰る手が思わず早くなってしまいました。どっちかが怖い目にあいそうで、早くどっちかが怖い目にあってくれ、とかなんとか本末転倒なことを考えていた気がします。