赤×ピンク

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癒し4コミカル4シリアス2
桜庭一樹赤×ピンク (ファミ通文庫)エンターブレイン,2003
桜庭一樹さんの作品感想一覧


日夜「ガールズブラッド」というイベントで、泥レスに励む少女たちの日常を描いた作品。3人の少女がそれぞれ主人公の中篇が収められています。イラストは高橋しんさん。
一人目は、二十一歳になるのに人見知りが激しく小動物的なまゆ。女王様なミーコとシャワーを掛け合ってじゃれあっているときの一言「お客さん、こっちのほうが喜ぶんじゃない?」には、私も心の中で笑っちゃいましたよ。
これに限らず、みんなにからかわれているまゆを眺めているとほのぼのしてくるな〜。一生懸命に反論したりする姿が想像できて、ついつい愛でたくなっちゃう。
ミーコと戦っているショーの最中に突然人生について考え始めるなど、その突拍子のなさも引き付けられる原因です。最後の唐突な幕切れも、らしい。


二人目は、お客さんの用意してきた物語に合わせてプレイをする女王様のミーコ。みんなに好かれているんだけれども、周りの人たちの要求にこたえて演じてしまう自分に疲れているわけで。
まゆのこととか愛のあるSMだとか師範代のこととかいろいろ頭を悩ませてぐるぐるするけど、ハイキックで決着をつけます。かっこいいですね。私はMじゃないので、ハイキックを食らいたいとは思いませんけれどもさ。


三人目は、同姓である女についつい冷たくしてしまう格闘少女の皐月。格闘バカの直線的性格に見せかけて、内心細かいところでも気になっているのはご愛嬌。おかしいと思っていても口に出せないことがあるわけで。
バイト先のレンタルショップの店長との会話が妙に印象に残っています。どんでん返しはちょいとびっくりしました。よく読んでみると、裏のあらすじにもちょいと触れられているのにね。


当たり前だけれども、少女と一口に言ってもみんなそれぞれ違うわけで。ただ、この物語に出てくる少女は全員強いな〜と思いました。狭い世界も広い世界もお茶の子さいさいな感じです。切り替えが早いってことなのかな。
狂言回しを担っている武史と比較すると、なおさらそう思えてきますよ。戦う情熱的な赤色と、おしとやかなかわいらしいピンク色で彩られている女の子は、私から見ると憧れですのじゃ。


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1 少女七竈と七人の可愛そうな大人  Amazon2 ありふれた風景画  Amazon3 包帯クラブ  Amazon
1、桜庭さんの小説『少女七竈と七人の可愛そうな大人』少女と少年それぞれの世界が描かれています。→感想
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3、天童荒太さんの小説『包帯クラブ The Bandage Club』包帯を巻くという行為を活動とするクラブの話。→感想