私の男

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シリアス4恋愛4鬱2
桜庭一樹私の男文芸春秋,2007
桜庭一樹さんの作品感想一覧




花と彼女の養父・淳悟の物語。花がお嫁に行くことになった2008年から物語は始まり、二人が出会うことになった1993年へと時間を遡っていきます。
表紙の先入観からでしょうか、雨の描写でも濡れるとかいう言葉に反応しちゃったりとかだめですね。
最初から、なにかの確信を持って花は淳悟のことを妄信的なまでに愛してるのが察せられます。「殺したからね」や「ずっと、逃げているんだ。」とか二人の雰囲気も退廃的。
第2章は花の結婚相手の美郎の視点で語られています。客観的な視点で進むんですが、狂気の影は薄まるどころか深まったような。決定的なものが見えてくるわけじゃないのですが、不気味な存在の輪郭だけがはっきりと見えてくるので嫌。


そうそう、抹茶と牛乳の飴の部分とか妙に印象に残っています。小市民な私としては、いやらしいと思っちゃうんだけど。その流れからのピアスはさらにガツンときました。
最終章はなんといっていいやら。「この子の父親になりたいんですよ」という発言なんかを聞いてると心地いいんだけどね。父と娘の二人になにがあったのかと気になってぐいぐい読ませられます。章が進むごとにぼやけてしか見えなかった二人の過去が徐々に明らかにされていきますし。
でも、ズレがズレとして認識できてない状況が伝わってくるだけのような気も。もやが完全に晴れることはなく、圧倒的な間違いというのが見当たらないから、ほとほと、困る。


この小説が好きな人にお勧めする3
1 砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない  Amazon2 カオスの娘  Amazon3 NO CALL NO LIFE  Amazon
1、桜庭さんの小説『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』新しく単行本にもなったり漫画も出ました。→感想
2、島田雅彦さんの小説『カオスの娘―シャーマン探偵ナルコ』タイトル通り現代のシャーマンが探偵する話。→感想
3、壁井ユカコさんの小説『NO CALL NO LIFE』擦り切れちゃってる物語。→感想