ウェスタディアの双星

小河正岳『ウェスタディアの双星―真逆の英雄登場の章 (電撃文庫)』メディアワークス,2008
小河正岳さんの作品感想一覧

小さなウェスタディアの平和を人徳で守ってきた素晴らしき王が亡くなることから物語は動き始めます。
最初のグダグダは圧巻。王と親交があり信頼もされていた大商会の総帥・チェザーリが、混乱を収めようと決意するところまではかっこいいのですが、貴族や軍人、果ては次期国王まで父の葬儀も行わずに逃げ出す始末。思わず褒めてしまいたくなるくらい素敵な逃げっぷりですよ。
そんなとき見つけた一筋の光が、修道院で暮らしていたルシリアという少女です。出会いのシーンで描かれているモノクロイラストがかわいいな〜。思わず私も付き従いたくなりましたね。

もちろん、ルシリアは性格もよくみなに愛されますが、他国に襲われた際の武力のなさはどうしようもなく……となっているところで、ようやく童顔の書記官・アルファーニと素行不良な指揮官・バドエルの凸凹コンビが登場します。なかなか出てこなかったので焦らされましたよ。
簡単には問題は解決しませんし謎のままな部分とか今後の課題も見えてくるんですが、ほどよくコミカルとシリアスがミックスされた展開で満足です。
「お留守バンシー」シリーズを書かれていた小河さんの文章ですし、燃える王道な展開と合わさり二重の安心と面白さでした。

この小説が好きな人にお勧めする３

１、小河さんの小説「お留守バンシー　シリーズ」バンシーたちが愉快にお留守番をする話。→シリーズ感想
２、水野良さんの小説「スターシップ・オペレーターズ　シリーズ」TVと契約することで王国を倒そうとする話。
３、橋本紡さんの小説「バトルシップガール　シリーズ」人格のあるうち戦艦と急遽艦長になった素人高校生の話。