いつかパラソルの下で

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癒し4コミカル4恋愛2
森絵都いつかパラソルの下で角川書店,2005


家族とは遠く離れ、達郎とのその日暮らしを続けていた野々が、一周忌を期に厳格だった父の過去を追いかけることになる話。
野々だけではなく、同じくブラブラと家を出ていた兄の春日や一人だけ父の言う通りに生活してきた妹の花などの物語でもあります。


途中で出てくるヤハギさんの衝撃の一言がすさまじかったなー。暗い血なども絡み合いあい、父の真実は謎に深まっていくばかりなのですよ。それを追う三人の微妙な真剣さ具合が面白く、この三兄妹のコミカルな会話も読んでて心地よいです。
兄妹のキャラクターだけではなく、佐渡に存在する愛や最後のおやすみなど、クスリとさせてくれる仕掛けがあるからいいですね。読んでて飽きてきませんよ。
もちろん、それぞれが自分のこれまでの態度を振り返り始めるなど、おいしい部分はちゃんと描かれているので不満などあるはずがありません。


極めつけのおいしさはイカですね。イカイカ祭りでしょう。イカ如きにこれほどの破壊力があるとは思ってもみませんでした。そして、最後に聞こえてくる音もよかったな〜。なんてことない描写だけれども、なぜだかやられた感じがしました。
むーん、桃源郷とは唯一特定の場所のことではなく、恋人と二人きりで背中を合わせて寝る部屋のことかも知れないし、ビールを片手に持ったパラソルの下のことかも知れませんね。あるいは、この本を読んでる部屋のことなのかも。


森絵都さんの作品感想


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