サンタクロースのせいにしよう

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ミステリ④シリアス③癒し③
若竹七海サンタクロースのせいにしよう (集英社文庫)集英社,1999


秋山真琴さんの感想を読んで手に取りました。失恋したばかりの柊子が、有名な俳優を父に持つ銀子という女性の家に同居するところから物語は始まります。日常の謎を扱った作品。


楽しい同居生活の始まりと銀子さんの過去の話を描いた「あなただけを見つめる」ゴミだしに口うるさい鈴木さんに降りかかる災難の話「サンタクロースのせいにしよう」チューリップ泥棒に対する推理を展開する「死を言うなかれ」コンクリートに残る犬の足跡と家に出現する幽霊の顛末を描いた「犬の足跡」嘘の話から始まる「虚構通信」飛行機の中でケンカするカップルの話「空飛ぶマコト」銀子さんとのお別れと子どもっぽいケンカの話「子どものけんか」七話が収録されています。


引越し先には幽霊が出たり、銀子さんはちょっと変わった人だったりとコミカルな設定でした。銀子さんの無茶苦茶さは全編に渡って描かれていますし。でもコミカルな話でホッコリする話だけではなく、シリアスな話だったりぞっとする話だったりとバラエティ豊かです。
文の調子にのってスイスイと読めるのは表題作かな。友人の夏美がいい味出してます。推理部分などのテンポのよさでは「空飛ぶマコト」が一押し。


どれもこれも最後の一文の気が利いています。題名から受けていた印象とのギャップからなのか、重い話が多めに思えました。徐々に柊子の目が現実に向いてきたみたいな感じも。
といっても、結末が希望の持てる終わり方だったのは個人的に助かりました。どたばた楽しい生活が終わってしまうのは寂しいですが、仕方のないことかも知れませんね。
サンタクロースのいる世界を築けるのは、子どもだけの特権でしょうから。いつまでも子どものままではいられないけど、成長できればそれでよし。


若竹七海さんの作品感想


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