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シリアス⑥鬱③癒し①
東野圭吾手紙 (文春文庫)文芸春秋,2006


弟を大学に行かせてやるために空き巣をし、結果的に強盗殺人を犯してしまった剛志。その弟である直貴の視点で語られる物語です。


設定からして暗い物語だろうとは予想していましたが、予想はしていても辛いものは辛いですね。
剛志から手紙を読みつつも、遺族への謝罪もできぬままに過ごす直貴の日々。兄が殺人を犯したというレッテルが直貴には貼られており、決して楽な生活ではありません。高校はなんとか卒業するものの、周りからは白い目で見られ、部屋を追い出され、将来性のある若者なのに底辺の生活が続きます。
度々登場する、幸せを願っている人はいても積極的には助けない、という言葉にはちょいと動揺してしまいました。きっと私も積極的に動くことはないでしょうから。
バイトも首になったりと暗鬱とした生活ではあるものの、職場の同僚のアドバイスもあり大学へ行こうと決意するなど、明るくなる兆しはあります。


もっとも兆しだけです。普通に生活をしたいだけなのに、色々と直貴は諦めなければいけないものが出てきます。読んでられませんよ。
出口の見つからない暮らしの中で、大手の会社の社長さんとの対話はよかったな。現実を見せつけられはするけどさ。
最後のそれぞれの決断に至るまで、実に考えさせられる物語だったけど、実のところあんまり自分に当てはめて考えたくない話でした。私にはまだ重いと言い残し、裸足で逃げ出したくなりましたよ。


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