二四〇九階の彼女②

二四〇九階の彼女②  Amazon
癒し⑤シリアス⑤
西村悠二四〇九階の彼女〈2〉 (電撃文庫)メディアワークス,2007


アントロポシュカという神の代行機械によって管理されている世界を舞台に、少年・サドリと相棒のカエルが階段世界を降りていき、外の世界を目指す連作短編集二作目。


七三五階の闇」暗闇に覆われて視界がまったくない世界の話。優秀なようで抜けているお茶目なカエルが、前巻同様いいキャラですね。
この世界の【鍵】はヒカリを見たいという少女・ヤクなのですが、彼女の姿がサドリとタブって見えるのも面白い。
追い求めて追い求めても手に入るとは限らないし、ましてや願っていたものと実物は違う可能性もあるわけで。案外、追い求めているときが一番幸せなのかもしれませんね。
二一三階のパズル」パズルばかりの世界の話。カエルがパズルを楽しんでいるイラストに惚れました。それだけで私は満足です。一押し。おやつ感覚だけど。
一二四四階の競争」定められたテストの結果によって、勝者と敗者に区別される世界の話。この世界では、瀕死のサドリを助けてくれた少女・サビに、彼女の保護者代わりのキオタリという修理人、そしてまだ動かぬカエルと出会います。
一緒に暮らしていくうちに、サドリに懐いていくサビがかわいらしい。リボンもよく似合っています。
それだけにこの結末はコーヒーのように苦い。みんなが一生懸命に生きようとしているだけなのに、どうしてもこうもままならないのかね。サビもパズルの国に生まれていればよかったのに。理不尽なものです。
一八六階の列車」永遠に列車で楽園に向かい続ける世界の話。
アントロポシュカに会いたいと願う少女・シャンにしても、駅長さんにしてもグレネードランチャーを発射する女性乗務員にしても、世界自体は狂っていても人がいいやつらばかりなので、救いがありそう。最後が希望のある話でよかったよ、ほんと。


西村悠さんの作品感想