陰陽ノ京⑤

陰陽ノ京⑤  Amazon
癒し⑤燃える⑤
渡瀬草一郎陰陽ノ京〈巻の5〉 (電撃文庫)メディアワークス,2007


平安時代の京を舞台に陰陽師などが活躍する約四年ぶりのシリーズ五作目。
とっておきの隠し技をもつ保胤と、高い地位の身ながら彼を慕うお転婆な時継たちは、安倍晴明の家へ泊まりに行くことになります。
しかし、筒に封じ込められたものが出てきてしまうところから、事件が起こります。天狗が盗賊と組んで家を襲うし、しかも襲った先は対して裕福なところでもないという、奇妙な違和感が残る事件。


事件の親玉であり策を巡らす妖・鶴楽斎に対抗することになるのですが、晴明こそいないものの、保胤を始めなかなかの面子。
保胤の父・忠行は引退した身とはいえ、食えない爺さんです。底がしれない。合間合間に出てきてはおいしいところを持っていきますし。腰とか腰とか腰とか。
安倍晴明の息子として、吉平以外にもその弟・吉昌が登場します。また、天一という謎の男も初登場するのですが、こいつも見所が多かった。雅な雰囲気が好きです。怖いところもあるけどね。
時継と晴明の妻・梨花のやりとりを聞いていると心が落ち着きます。素敵な母親である梨花に、少しでも近づこうとする時継が愛らしいですね。
それにしても梨花はさすが晴明の妻、肝が座っていますね。そ知らぬ顔で最善を尽くし平常心を失わない姿勢はすごい。酔ったらもっとすごい。
様々なからくりが明かされるところは面白かった。種明かしの仕方も粋なものです。
小さい恋物語も楽しいな。「傍にいられなかった僕の悔しさも、わかるよね?」は不意打ちだ。逆に保胤と時継の関係は遅々として進まないな。その人なりのペースがあるんでしょうが。


とりあえず、読み終わってほっと一安心できるお話でした。久しぶりでしたが、序盤からがっちり物語に入り込めましたよ。ほんと渡瀬さんはうまいな〜。渡瀬さんの世界で踊らされるのが心地よいのです。
続きは確約されていませんが、読みたいですね。再び四年くらい待つなんてへっちゃらですから。……願わくばもう少し早めに三年……いやいや半分の二年……欲を出して一年以内に……。


渡瀬草一郎さんの作品感想