土くれのティターニア②

土くれのティターニア②  Amazon
コミカル⑤癒し⑤
増子二郎土くれのティターニア〈2〉 (電撃文庫)メディアワークス,2007


南国精霊(仮)をつれて歩く良文と半分は人ではない明日香の幼なじみコンビが繰り広げる、ちょっとした騒動を描いたシリーズ二作目。五話収録されています。


水は誘う」明日香は気の緩みから水妖に襲われるなどしているのに、良文を遠ざけているようだったので何でかなと疑問に思っていましたが、読んで納得。もう、なんてかわいらしい理由なんだ。”恐怖の暴君”の称号も形無しですな。
よくよく考えると大変なこともあったけど、明日香の動揺する姿で笑える話でした。ネネコたんラブ。
真心は鞄に込めて」ボロボロの姿で明日香たちを待っていたクロという少女を巡る話。クロは鞄を大事に抱えており、明日香たちにそれを守って欲しいと頼み込みます。
自分の力ではどうにもならないことを悔しいと思ってるだろうに、それを隠して健気に生きるクロの姿に心が揺らされます。終わり方もよかよか。でも、クロよりも扱いがひどい良文には泣けるな。
夜の鳥」産女にまつわるお話です。この話の冒頭の一文が、帯に使われている「――やぁ、大賀くん。朝まで、わたしと過ごしてくれないか」です。
最初この使い方は卑怯だろうと思ったんだけど、読んでいくといいかなって気分になった。確かに二人で一夜を語り明かすわけですし。二人の間に絆を見ることが出来て安心しました。
糸を断つとき」前巻にも登場した史子が再登場します。史子の片想いの相手であり良文の友人でもある新井に異常が発生する話。
積極的に動くので史子と新井の仲が変化するかなと思ったけどそんなこともなく、でも明日香と史子の距離が縮まってました。明日香に友達ができてよかったという気持ちと、同性同士の間に入り込めない悲しさで苦労する良文に合掌。
魔女の行く先」同じく前巻に登場した明日香を排斥しようとした女の子・水野に関わる話。ツンツンしてるところは今までどおりなんだけど、邪気のない笑顔を見せたりと変化が見えます。
水野が友人を守るために立ち上がるなんて、一巻の時点じゃ想像もできなかったのにー。こうなると、計算高いところも逆に魅力的に映ります。


一巻で徹底的にぶち壊された明日香の環境が、徐々によくなりかけてる感じがしますね。様々な切り口の物語を味わうことができるのは、こういう連作短編集の強みでしょうか。
どの話も最後の一文がキラリと光ってましたね。オチがちゃんとあるのもいいです。もっともっと色んな話を読んでみたいと思いますよ〜。



増子二郎さんの作品感想