僕僕先生

僕僕先生  Amazon
恋愛4癒し3コミカル3
仁木英之僕僕先生』新潮社,2006


第18回日本ファンタジー大賞・大賞受賞作。お金に不自由なく暮らしているため、豪遊はしないものの仕事にも就かずのんびりしている青年・王弁が、父親の言いつけで僕僕という仙人に出会うところから始まる話。
王弁が最初に僕僕と出合ったとき、僕僕が少女の姿をしていたので仙人とは思わず、びっくりするところから既に楽しいな〜。働きもせずにぐうたらしている王弁に向かっての一言「何もしていない人間などいないのだよ」も印象的。


王弁と僕僕は一緒に旅へと出ることになるのですが、王弁は徐々に抱き始める僕僕への好意というか劣情を見透かされる上におちょくられており、その感覚が新鮮です。最後の一線を越えまいと、王弁がなかなか行動に移ろうとしないのがいじらしいですよ。
旅の途中には二人で温泉に入ったりもします。裸の付き合いをするわけではありませんが、やはり何かしらのイベントはあるわけで。僕僕が自分のことをどう思っているのか分からず、王弁と一緒になって不安になったり安心したりと一喜一憂してました。
弄ばれてる感じが嫌といえば嫌なんだけど、妙な心地よさと快感があるのよねー。


王弁は仕事もせずにのんびり生きてきており、僕僕とあってからも突然人が変わったように活発になるわけではありません。でも段々と自分なりの考えを持つようになり、さらには犬も食わない夫婦喧嘩の仲裁や馬になんとか乗ろうと苦心するなどの経験を通して、自分の考えを周囲に伝え始めます。
考えをまとめるだけではなく、人に伝えるってことは随分と大事なことだと思いますよ。
もっとも、そんな成長もはっきりとした形では見えてこず、いまいち把握しきれない王弁にふさわしい形容詞は、僕僕の言葉を借れば「とぼけた男だな、キミは」がぴったりなんでしょう。


終盤の王弁が動き始める辺りも自然な流れでよかったです。混沌からの脱出を図ったりして、信頼関係が垣間見え始める辺りは楽しくて仕方ないですねー。
普段は王弁が自由きままに、恋愛に関わる話になると僕僕がのらりくらり。そんな二人のとぼけた会話もまたよし。魅力的な二人が繰り広げる旅の物語なんだから、面白くないわけがないですね。


仁木英之さんの作品感想


この小説が好きな人にお勧めする?
?支倉凍砂さんの小説「狼と香辛料シリーズ」賢狼と商人の旅路。→シリーズ感想
?柴村仁さんの小説「我が家のお稲荷さま。シリーズ」妖孤と兄弟の日常。→四巻感想
?『Sweet Blue Age』青春文学のアンソロジー。→感想
(追記)?田村登正さんの小説「大唐風雲記シリーズ」中国を舞台にしたタイムスリップもの。
? 狼と香辛料  Amazon? 我が家のお稲荷さま。  Amazon? Sweet Blue Age  Amazon? 大唐風雲記  Amazon