コミカル⑤シリアス④恋愛①
鈴木鈴あんでっど★ばにすた! (電撃文庫)メディアワークス,2007


鈴木さんの新シリーズ。家族ぐるみの付き合いをしている幼なじみの真尋と冬子が主人公です。真尋がぼーとしたタイプの男の子で、冬子は考えるよりも行動するタイプの女の子。
この二人は十年以上の付き合いでかなり信頼し合っており、でも恋人同士でないところはお約束かな。いじらしいですね。五法想と呼ばれる不思議な力を持っていることから、とある盗難事件の解決を依頼されますが事件そのものは序の口でしかありませんでしたね〜。
事件の捜査中に、煙管をふかす金髪の幼女で、服装に関する描写がないから正確には分かりませんが、ゴシックな衣服をまとったリシェルと出会います。結構秘密があったりする模様。小さい子供みたいな姿のくせに只者ではない風格ですし。このリシェルとの問答を通して、真尋もしっかり考えているんだなと思いました。軟弱物ではないと。
もっとも、考えるだけでなくちゃんと言葉にしてあげない限り、冬子には伝わらないと思うのは私だけでしょうか。「また明日ね」を額面どおりに受け取ると、こんなにひどい言葉だとは思わなかった。
依頼人であるセフィラが子犬のように真尋を慕い、微妙な関係の二人に割って入り混じってくるから恋模様は大荒れ。特に冬子の執念は並々ならぬものがあります。両手に花状態の真尋のとまどいも見所でしょうか。
また、本筋とはほぼ関係ないんだけど、ひたすらわがままな冬子の頼みを聞きく役どころの、使用人である左乃宮と晶のやりとりもなんだかんだで楽しい。左乃宮は二人もお守りをしなきゃいけないので大変だな〜。冬子のお嬢様っぷりも、晶のいちゃっぷりもすごいすごい。
コメディ要素を連発しつつ、いつもの鈴木さんの如く、楽しいだけでは終わるわけがないです。犯人のアジトに踏み込む辺りから、流れは暗転し始めます。敵も見方も苦悩する姿がばっちり詰まってますよ。何々しなければならない、って意志は強固なものだけど怖いですね。まあ、最後は悪いようにはなってないので助かりました。
同著者作品感想
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