ファンタジー④燃える④バトル②
冲方丁カオス レギオン04 天路哀憧篇 (富士見ファンタジア文庫)富士見書房,2004


クライマックスも近づいてきたシリーズ六作目。雑誌上で連載されていたものに、大幅加筆されたものが収録されています。いや、多分増やしすぎですから。
とあるきっかけで、キリという少女もジーク一行の旅に同行することになるのですが、これまでのメンバーと違って新鮮やな。このキリとノヴィアの会話は面白かった。ジークやアリスハートではこういう会話ができないだろうから。もちろん、それぞれにいいところがあるんだけどさ。最後にはノヴィア&キリメモリアルアルバムとして、二人のイラストが何枚か収められています。雑誌連載時に載っていたイラストかな。
領主・レオニスの凶行やクランの聖母の話、ノヴィアの大切なお金を盗ったキリに対する態度など、悪事に対してどういう態度で接するのかという問題が、今回の物語のポイントなのでしょう。人それぞれ許せないポイントもあるだろうし、バランス感覚というのはなかなか身につけられません。
もう一つ、レオニスとトール、ノヴィアとキリという二組のケンカも大きなポイントだと思う。徐々に心境の変化が起きていたトールが、レオニスに反旗をひるがえすところは見もの。影としての役割を越えての成長は面白いです。まあ、ジークの敵対する側の話ではありますが、どう転んでいくのやら。
そういえば、四巻(→感想)でもはっきりと描かれていたけれど、故郷とはなんぞやみたいな話に冲方さんは興味を持っているのかな。つまるところ、心のよりどころの話。今回は大いなる故郷ともいえる海が、キリの旅の目標地点となってますし。心のよりどころを考えていくことが、人生とはなんぞやという問いかけへのアプローチ方法になってるわけです。
レティーシャに毒されて狂っていくレオニスを止めようとトールが決意する場面は燃えたし、灯台でドラクロワのジークへの想いが垣間見える辺りにはきゅんときましたよ。ジーク、レオニス、そしてドラクロワのそれぞれの陣営が固まってきたようなので、後は結末を読むだけです。
同著者作品感想