ファンタジー⑦癒し③
上橋菜穂子狐笛のかなた (新潮文庫)』新潮社,2006


webの感想を読んで手にとりました。「心の耳」という不思議な能力を持つ小夜がある狐を助けるために、近寄ってはならないと言われていた屋敷に逃げ込み、そこで小春丸という男の子に出会うことから始まるお話。
小春丸との思い出も薄れてきたある日、ふとしたきっかけで小夜は自分の出生の秘密を、徐々にですが知ることになります。またそのために、いつしか小夜は若桜野という領土を巡っていがみ合っている、二つの国の争いに巻き込まれていきます。周りに気を使いすぎている感じもする優しい小夜が、得てしまった能力に苦悩するところなどは読んでて辛かった。
この小夜の物語には、小夜の命をとるように命じられた野火という霊孤や小夜の師匠的立場にいる大朗、対立している領主の春望と盛惟、そして両国の歴史などが複雑に絡み合ってきます。小夜はもちろんのこと、小夜と接することで野火、大朗、春望などの人たちがそれぞれの決断をする辺りは大変面白かった。読み終わるとほっと安心できるような物語でした。
同著者作品感想
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