やっぱり地元が出てくる話は身近じゃミステリxコミカル


太田忠司維納音匣(オルゴール)の謎 (祥伝社文庫)祥伝社,2001


妹の千鶴に引っ張られて事件に関わってしまう素人探偵・志郎の苦難を描いた霞田兄妹シリーズ四作目。刑事である三条からデートに誘われたイベント先で、千鶴が事件に巻き込まれてしまう話。タイトルにもあるように、殺人現場でオルゴールが鳴っているなど、今回の事件の鍵はオルゴールが握っています。
事件のそのものについては、逆密室なるものが登場したり、同一犯と思われる連続殺人が起きたりします。後味さわやかな殺人事件ってのもないでしょうが、悪意が詰まりすぎです。それに、最後のオチは悪意はないにしても非難轟々です。予想はなんとなくついていたけど、相変わらず遅々として進展しない関係のお二人や。
事件への関与に消極的な志郎に対して、千鶴は鬼のような手段を使ってでも動かします。なんつか、この兄妹は志郎がよくできた大人でよかったなと思う。そしてまた逆に、志郎がどこまでも事件について誠実に対応しようとするあまり自分を犠牲にしているシーンが多くて辛いな〜。楽にしようと思えばできるだろうにしない態度には、どこまでも苦労人体質だなと思ってしまう。悩む探偵ってのが魅力だけど。
あとがきによると太田さんは、書いているうちにオルゴールにはまってしまい、十万円もするオルゴールを買ったんだとか。私は未読ですが確か今年、オルゴール修復師の作品も書かれていたと思うし相当好きなんでしょう。私もわりと好きでオルゴールの博物館とか行きましたし、オルゴールにまつわる話だけでも十分に楽しめましたよ。
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