ちょっと落ち着いた感じがしますシリアスxダーク


佐藤友哉子供たち怒る怒る怒る』新潮社,2005


書き下ろしを含む六編の短編を収録した佐藤さんの短編集。
大洪水の小さな家」「ぼく」と弟と妹の三人がいれば完成されており、他になにもいらないと考えている兄弟が突如洪水に巻き込まれる話。行き着く先はこれしかないかな〜って感じ。「死体と、」幼くして死んでしまった少女の遺体を巡るお話。圧倒的な文章で一度も改行せずに、しかしその勢いとは裏腹に淡々とした印象を受けます。そういう意図もないだろうに、序盤で何となく涙が出そうになった私は涙腺がゆるいんでしょう。
欲望」普通の少年少女がクラスメイトたちに向けてサブマシンガンやハンドガンをぶっ放す話が、そのクラスの担任の先生の視点で描かれています。先生は他人を分類しデータベースと照らし合わせることで対人関係を選択しているんだけども、犯人たちはこの行動に理由はないと言い出し、分類わけに窮します。「子供たち怒る怒る怒る」頭の中だけの見えない友達を持つ対人関係能力の欠落した「ぼく」が、転校そうそうに友人を作ったものの、残虐な連続殺人犯・牛男の行動を当てっこするゲームに参加する話。謎が謎を呼びます。妹とのうにゃりこは佐藤さんらしいというかなんというか。
生まれてきてくれてありがとう!」公園で遊んでいたらいつの間にか雪の中に閉じ込められていた話。これも自分ひとりで完結している話ですね。周りのものをなんとも思えないわけです。「リカちゃん人形」親からは虐待されるしクラスメイトからはイジメられるし、果ては通りすがりの男たちにレイプされてしまう薄幸少女の話。彼女は自分を守るための人形になる術を持っていますが、活動家や生徒指導の先生に引っ張られていきます。これだけ救いがあるように思ったのですが、主人公が女の子だからでしょうか。
読み終えて伝わってきたものだけを考えると、兄弟やら雪というモチーフを使って自分と他人との距離感というわりと古典的なものを描いているのかな。もっとぐちゃぐちゃした文学なんて何さなイメージを持ってたんだけど、なんだったんだろう。妹にドキドキしたり人形のスカートを上げてドキドキしてる泥臭い自分を隠すために理論武装した、嫌ないいかたをすれば、小ざかしい少年を書かせたら天下一品な印象です。
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