役を交代させられた田村くんかわいそうだけどラブxコミカル


橋本紡半分の月がのぼる空〈8〉another side of the moon-last quarter (電撃文庫)メディアワークス,2006


短編集の二巻目にして半分の月シリーズの最終巻。四つの話が入っています。巻末にはイラスト担当の山本ケイジさんと漫画を担当しているB.タロウさんのコメント&カットも収録されています。
雨(後編)」前巻の続きのお話。この話が一番好きですね。文化祭の最中に盗撮写真のオークションの場面がありますが、前編のロシア映画の場面と同じく、文字数も多くて濃いです。アホというかなんというか。……ああ、盗撮はいけません。エッチなのはいけないと思います。それと、過去に裕一へちょっかいをかけてきた美沙子さんが出てきましたが、その後のプロレス描写も相変わらずで紙面いっぱいに字が埋まってましたよ。バカ騒ぎらしさがにじみ出てます。
このシリーズらしいなと思ったのは、トリアージ絡みの話。例え天才的技術をもつ夏目でも、最善は出せても万能ではないんだよねとかちょっと思った。当たり前といえば当たり前なんだろうけど。バカ騒ぎをしようが必死に祈ろうがなんだろうが、結局は結果が返ってきたときに割り切れるかどうかなんでしょうね。自分を納得させられるかどうかみたいな。まあ、当分は幸せな感じが続きそうな「もうちょっとそばにいろ」というセリフにニヤニヤ。 
蜻蛉」熱血童顔のまり子先生と裕一とから揚げ丼と戦争の話。旧字体が使われています。「現実って、すごく足が速いんだから」が、今の自分には身にしみた。これは確か読んだことあるはず。「市立若葉病院猥画騒動顛末記」元はラジオドラマ用の話らしいです。エロじじい多田さんの所有する何千ものエロ本を処分しようとする病院側と守ろうとする患者側の攻防が描かれます。設定を生かしたバカバカしいなお話です。エロは生きる原動力ですね。「君の夏、過ぎ去って」中学生の吉野が先生に頼まれて、入院中の里香にプリントを渡しに行ったことから始まるお話。夏目と小夜子の幸せな時間もチラッと出てきます。吉野さんは素直ないい子じゃ。
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