まろやかな味わいになってますヒールxシリアス


壁井ユカコ鳥籠荘の今日も眠たい住人たち〈1〉 (電撃文庫)メディアワークス,2006


変人ばかりが集まっているホテル・通称「鳥籠荘」を舞台にした連作短編集。メインとなるのは、ヌードモデルをやることになった少女・キズナと、彼女をモデルとして雇っている唯我独尊の画家・浅井です。四話収録されています。
さよなら、泣き虫ポストマン」は、キズナの友人であり人の悪意に鈍感なジョナサンにまつわる話。予想はつくんだけどやられてしまいますねー。いつもながらの壁井さんワールドですが、最後にはちょっと希望が持てるかも。「ストリート・ブレイブ・ガール」は一話目よりもちょっと前、キズナがモデルのバイトをやり始める前後の話。キズナのやさぐれ具合は壁井さんらしいです。「少女たちは冷たいスリルをチョコレートシェイクみたいにすすって楽しんでいたのだ」とかね。浅井もまともなようでいまいち不安定な男ですが、画家という職業だからか特につまずきません。すんなりはまる感じ。まあ、浅井の従兄弟である由起の存在も大きいかな。
パパはわたしだけのHERO」は、ゴスロリ小学生の華乃子を主人公に、父親との交流を描いた話。発表会に父親を呼びたくないから嘘をついたというオーソドックスな話ですが、華乃子とパパさんの反則なまでに最高な設定にノックダウンされるはず。駆け抜ける姿とか、かっこいいじゃないですか。ゴスロリ幼女万歳。「籠の中の羽のない鳥」ふとしたきっかけで、浅井の過去を知ってしまったキズナの話。構図的にはいつもの壁井さんなんだけど、あとがきにも書かれていますがちょっと痛さが加減されていて読みやすいかも。主人公の姿勢がちょっと違うだけで、ずいぶん見えてくる世界も変わるもんだな〜。この本は素直に面白かった。期待の新シリーズです。
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