本編よりも、ギギナのお兄さんっぽい場面が多かったようなヒートxシリアス


浅井ラボ災厄の一日―されど罪人は竜と踊る〈3〉 (角川スニーカー文庫)角川書店,2003   類似検索


先月漫画も発売されたされ竜の三巻目。スニーカーに掲載された短編集のようです。全部で五編収録されており、書き下ろしはひとつ。相変わらずガユスとギギナの会話の応酬がたまらんです。
「翅の残照」闇社会に属している攻性咒式士に関する話。わりと初期に書かれた作品だからか、化学絡みの例えとかが前面に出ています。コンビの会話のキレは初めからあって、『こんなのあったら嫌だ』対決とかも展開しています。そんなわけだから、主人公のガユスくんは愉快な皮肉屋とか呼ばれちゃうわけですが。
「道化の予言」閉ざされた山荘を舞台に人狼が登場する話。ガユスの自分の甘さに対する悩みがテーマです。道化の予言というゲームとか、小物の使い方が巧みじゃないかな〜。
「黒衣の福音」女子高生と連続殺人事件の話。犯人は典型的な悪役だけれども、それと自分とを重ね合わせてしまうガユスくんの葛藤が引き続きメインです。筋とは関係ありませんが、「もう一回、もう一回だけ、鎌を振らせて」と言う幻覚がかわいらしいなとか思いました。
「禁じられた数字」記憶喪失のガユスが記憶を取り戻すまでの話。酒場で出会った面子が、ある種反常識的な攻性咒式士だとすれば普通の飲み会で終わるわけもなく、罰つきのゲームが開始されてはもう転がり落ちるのを止められはしません。
純情っぷり爆発のギギナもイーギーもみんな愛らし過ぎます。まっとうと思われていたジブちゃんもガユスのおかげで大活躍。でも、やはり私の一押しはジャベイラ姉さんかな。……ああ、彼・彼女らの奮闘をぜひイラストつきで見たかったよ。「始まりははばたき」枢機卿周辺の話。いい話と見せかけつつ泥沼で鬱な話に展開し、しかし熱い方向へとシフトする妙な流れ。うむむ、勧善懲悪とはいかないのだな〜。
総じてどの話も丁寧に伏線を張ってそれをきちんと回収している印象。短編集でも本編と変わらず鬱屈とした雰囲気なのですよ。その中において、酒場のやりとりに力が注がれているように感じる「禁じられた数字」が異色の作品だけど、私は一番好きです。ひぐらしもそうだけど、単純なゲームなのに白熱する展開が私の好みなのかも。