光原百合時計を忘れて森へいこう (クイーンの13)東京創元社,1998


童話出身の作家、光原さんの作品。日常の謎を扱っています。
森の案内人・レンジャーが探偵役と珍しいです。中学生の少女・翠ちゃんが助手。あまり推理するわけではありませんけどね。三話で構成されています。
一つ目は、翠ちゃんの学校での話。恵理ちゃんとか冴子が登場します。ともかく、翠ちゃんの視点がすがすがしくていいです。純朴そうな女学生らぶー
二つ目は教会での話。牧師が登場します。これまでの二つは似たような話を書いていたので、筋は読めました。と言うか、この本に入っている三話ともわりと先が読めます。本格的な推理小説で先が読めちゃうとなえますが、これはその心配がないのです。
「物語……できたかもしれません」本も読む人によって違う感想を抱くのと一緒ですな。謎も見方によっていろいろ変わると。あるいは逆で、見方によっていろいろ変わるのが謎なのかな。
物語を語り終わった後の、護さんと翠ちゃんのやりとりが一番印象的でした。三話目、最初に入っている数編の童話がどれも素敵。とくに「雪の宝石」が好みかな。それ単体で読んでも面白いのですが、書いているのは三話に登場する人物達(「雪の宝石」は翠ちゃん作となってる)なので、読み終えて各々の性格を知ってからもう一度読み返すとさらに面白いかも知れません。
ふくろうタイムはぜひやってみたいですね。自宅の外で同じようなことやったことはありますが、自然の中でやったらもっと色んなものが見えてくるのかな。童話作家の星野さんもかっこいい!
連作短編とはいえ主な舞台・人物は三話とも変わってしまうので、翠ちゃんの友達などもっと知りたいと思ってしまいます。欲張りでしょうか。それにしても、ういういしい描写が多いですし富士ミスでやってくれないかな(笑)


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